人生のバグに振り回されがちな人や、日常でクスッと笑って気分転換したい人へ。まじこの波乱万丈な実体験エピソードをお届け中!

第23話 まじこセンサー発動!10歳で「大人の顔色を窺うプロ」襲名!

落ち着ける居場所なんて、どこにもなかった

今振り返ってみても、まじこには心が落ち着いた状態で、仲の良い友達と過ごした思い出が
見当たらない。
例えば、友達を集めて誕生会をした、とかそういう楽しい記憶。

考えてみれば、子供のころのまじこは、いつも何かを気にしていて、何かから逃げるような
感覚
で生きていた気がするんよ。
だから、学校へ行っても、友達と一緒にいるときでも、もちろん授業中であっても、何一つ
集中できない、落ち着かない子やった。

唯一、運動や音楽の時間だけは集中できていたけれど、これは楽しいからというより、身体
が勝手に反応する条件反射や。

お母さんのことをいつも気にかけているわけでもなく、お父さんのことを考えているわけで
もない。
ただ、その異常な状況のなかに放り込まれていて、「いつも心が落ち着かない思い」を、幼
いまじこは抱え続けていたんやと思う。

「今日は、どこへ帰れば良いのだろう」
「今日は、誰の家に行くのだろう」

もちろん、自分の家にいられる日もあった。
けれど、だからと言って家が落ち着く場所だったわけではない。
なぜなら、まじこの部屋にはいつも、いつでも逃げ出せるように綺麗に整理整頓された 「お
泊りセット
」が隠されていたから。

小学生にして、大人の顔色を窺う「プロ

洋裁教室の先生は、いつも快くまじこ達を受け入れてくれてはいた。
けれど、先生のご主人は体が弱かったから、お母さんも相当、気を遣っていたんやろな。
そして、他のおばちゃんたちからは、だんだんと「迷惑そうな雰囲気」が漂い始めていた。

それは、子供のまじこにもはっきりと伝わってきた。

まじこは小さな時から、ずっと大人の顔色を窺って生きてきた。
このままだと三白眼になるんやないかとさえ思ったほど。

だから、小学 4 年生ともなれば、もうその道の「プロ」や。
大人のちょっとした目線や空気の変化を、まじこのセンサーがピピッと敏感に察知する。
あ、まじこたちは歓迎されていない。迷惑なんだ

でも、そんなアンテナを張り巡らせながら、その夜を終わらせなきゃならんかった。

断られた呼び出し電話と、姉のアパートの灯り

ある日の夜、まじことお母さんは、いつものお泊りセットを抱えて夜の街を歩いていた。
北国の秋は、雨が降るともう信じられないくらい寒い。すでに手はかじかみ、靴の中に入っ
てくる雨水で足の感覚も冷たくて麻痺してくる。

そんなザァーザァー降りの雨のなか、お母さんとまじこは、姉が住んでいるアパートへと向かっ
ていた。
突然の雨だったから、二人とも傘すら持たずにびしょ濡れやった。

当時は「呼び出し電話」が主流で、一般の家庭にはまだそんなに電話が普及されていなかっ
た。
アパートの大家さんのところに電話をかけると、大家さんが「○○さ〜ん、電話ですよ〜!」
と呼び鈴を鳴らす。
お母さんはそうやって、雨の中の公衆電話から姉を呼び出した。

けれど、電話口で姉からピシャリと拒絶されてしまった。
多分、お母さんも薄々、察してはいたんだと思う。

そのころ姉にはボーイフレンドができていて、その日も一緒に過ごしていた。
姉は、玄関に顔を出すわけでもなく、せめて傘を一本貸してくれるわけでもなく、呼び出し
電話の向こう側だけでまじこ達を断った。

行こっ!
お母さんはまじこの手をグッと引っ張り、姉のアパートにくるりと背を向けた。

歩きながら、まじこは振り返って姉のアパートの窓を見上げる。
部屋の電気は、暖かそうにに点いていた。
お母さんの発した「行くよ」というサインに 「どこに行くの?」と聞けないまじこがそこに
いた。

まるでドラマのワンシーンのようだけれど、当時の本人たちは、とにかく必死だったんよ。
どこに行こう。どこなら、今夜この子を連れて泊めてくれるだろう――。
お母さんは、頭の中でそればかりを考えていたに違いない。

結局、その冷たい雨の夜、どうやって夜を明かしたのか、どうしても思い出せない。

バッサリと切られた髪と、終わらない劇場

お母さんはまじこの髪の毛を、毎日、丁寧に梳(と)いてくれていた。
「早くしなさい!」だのなんだの、いつものように文句を言われながら。
けれど、まじこの髪の毛だけはいつも綺麗にしてくれていた気がする。

けれどある日、その髪をバッサリと切ることになった。
っすぐでサラサラだったまじこの自慢の長い髪の毛が、容赦なくバッサリと落とされた。

不思議なことに、切られた髪の毛は何故だか、伸ばした輪ゴムがはじけた時のように縮み、
一気にくるくるしたウェーブヘアになった。
まるでパーマをかけたみたいになったまじこの髪。
それを見て、何が起きているのか幼心に戸惑った。

お母さんは、自分と子供の身を守るように一時的に避難するため、まじこを連れて友人たち
の家を転々としていた。
でもそれからは不思議にその回数はわずかに減っていった。

だけど、そのお泊まりの回数が減ったことと引き換えにするかのように、わが家の 「夜のヒ
ートアップ劇場」は、また時々、開催されるようになっていた。

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