そんなママゴンも、1 度だけまじこを褒めたことがある。
まじこが犬の出産を作文に書いた時や。
初めてお母さんにほめられたのは「作文」
PTA か何かの帰りで、お母さんはすごく上機嫌で家に戻ってきた。
先生がまじこの作文をとても褒めていたらしく、ママゴンはご機嫌さんやった。
その作文は、飼い犬のチロに赤ちゃんが生まれた時のことを書いたもので、冒頭が会話から始まっていた。
「生まれたよ!」という書き出しは、まだ国語でも習っていない表現で、内容もその時の気
持ちが手に取るようにわかると先生が言っていたらしい。

まじこはその時、お母さんは作文を書いたまじこが褒められたことがうれしかったのか、自分の子供が褒められたことが誇らしかったのか。
まじこは「あぁ、これは後者やな」と感じていた。
夏休みの自由課題には、まじこは「蟻」を選んだ。
透明のガラス瓶に土を入れて、蟻が道筋を作っていく様子を記録していった。
蟻にとってはビン詰めにされ、私生活が丸見えで、えらい迷惑やったと思う。
でもその時代は、女の子があまり興味を持たない分野なのに、「着目点がすごい」とかなん
とか、そんなことで褒められた記憶がある。
お母さんにしてみたら、いつの間にか月賦で購入した、ガラスの書棚にきれいに並べた「ブ
リタニカの百科事典」を読んで勉強してほしかったのだと思う。
お母さんはそこから得たものをもっと深掘りして、「こうだったのではないか」というような、子供なりの研究結果や感想文を学校に提出してほしかったのだと思う。
でもまじこは、自ら進んでその本を開いたことさえなかった。
家にはわんこが 2 匹、お祭りで買ってきたひよこ、インコにカナリア、熱帯魚がいた。
冬になると、わんこは家の中にいる。
ある日、お母さんと買い物から帰ると、鳥かごの扉が開いていて鳥がいない。
上目づかいでばつの悪そうな顔をして、伏せの姿勢で顎を床につけていたモク。
鳥たちは自由に舞い、楽しそうやった。
何があったのか。床には鳥の餌箱が散乱し、餌も散らばっている。
なぜかモク口や鼻の周りにも鳥の餌がついていて、何が起こったのかがすぐにわかった。
モクはおなかが空いて取の餌の盗み食いをしたんや。
まじこにはすぐわかった。
庭で勝っていた鶏は、その後晩御飯のおかずになっていた。
弱肉強食、命を頂くっていうことはこういうことやな。
嫌だったお母さんとの買い物
夕方になると必ずお母さんの買い物に付き合わされる。
荷物持ちとして。
まじこにとっては遊んでいる時間を邪魔されるし、ほんま面倒くさかった。
お母さんは「出かける」と言ってからが長い。
身支度や化粧直しに時間がかかる。
買い物に行くと言われて遊びを中断され、お母さんの身支度を待つ時間が、まじこはめちゃ
くちゃ嫌いやった。
そもそも当時は、スーパーというより小売店が並んでいる商店街へ買い物に行く。
お母さんはナイロンのようなひもで編んだ買い物かごを持っていた。
お菓子やお肉も量り売りで買い、魚屋さんや八百屋さんの店には必ずと言っていいほど、ざ
るにゴムが付いて天井からぶら下がっている「おつり入れ」があった。
買い物カートやレジなんて、そもそもなかった。
だから今の子供たちのようにスーパーの中を自由に走り回るとか、好きなおやつを選ぶた
めに親のそばを離れるなんて、しもべのようにお母さんのそばで荷物持ちをしているまじ
こにはありえへんことやった。
まじこは、おやつも買ってもらえない買い物に付き合わされるのが大嫌いやった。



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