ある日、お母さんが迎えに来た。
暫くお母さんもお爺ちゃんの家に滞在したけどそう長くはいなかった気がする。
なんだかバタバタした記憶があるから。
まじこは、お母さんとまた汽車〜船〜汽車を乗り継いで、住んでいた場所に戻る。
でも、ついた場所、そこはまじこが暮らしたあのアパートではなかった。
きれいなアパートで、原っぱの中にポツンと新しく一軒建っていた。
今までとは違う、2 階建てで、各家庭にちゃんと玄関があるアパート。
風呂場もあった。
まじこが住んでいたあの多世帯がすむ大きな廊下のアパートじゃなかった。
誰かが暮らしている様子があった。
見慣れたものもたくさんあった。
……でも、知らないおじさんもいた。

まじこは不思議だとも嫌だともなんにも感じなかった。
何の感情もなかったというのが正しい。
でも、どのタイミングだったのかもう忘れちゃったけど、お母さんが働いていた夜のお店に
一度だけ、まじこは連れられて行ったことがある。
その時に、そのおじさんと会っていた。
今考えると、そこで夜働いていたお母さんと、そのおじさんとが仲良くなって、「一度うち
の子供に会ってみる?」みたいな流れでそうなったんやろなと察する。
お母さんはいつも勝手にまじこの事を決める人で、それは大きくなる時までずっと続いていた。
まじこには「~するべきだ」「~しなければならない」そういう風に教育してきた。
この状況をまじこなりに大人になってからこう解釈していた。
お母さんが夜お勤めしていた時にこのおじさんと出会った。
それは間違いがない。
そしておじさんとお母さんは愛を育むためにまじこが邪魔だった。
思春期で勉強をしなければならない年頃の姉の「お勉強環境保護」のために、お爺ちゃんのところへ2人とも預けられたのだろう。
お母さんはおじさんの力を借りちゃっかりその間に引っ越し、一緒に過ごしていたのだろう。
確かに生活も厳しかっただろう。
その時はお母さんも胸いっぱいの期待や希望があったんやろな。
その後、落ち着いたタイミングを見計らって一番ちびのまじこだけ連れ戻された。と。
だけど、そのアパートでおじさんと暮らした記憶も、まじこがそこで暮らした記憶もあんま
りないんや。
お母さんがお勤めに出ていた記憶もないし、今考えると、母はどうやって生活を維持していたのだろうと思う。
その地域で誰かと遊んだ記憶もないし。
幼稚園や保育園に通った記憶もない。
きっと色々とそのおじさんに助けられてたんやろな。
お風呂場へ監禁される
そのアパートでの暮らしで唯一覚えていることがあるんや。
なにが起こって何が原因でそうなったのか全く覚えていないんだけど、ごっつ怒られて風呂場に閉じ込められた記憶が断片的にある。
本当にそこだけ。
一人で風呂場に閉じ込められたまじこは、すごい勢いで泣いている。
風呂場だから泣いている声はすごく響いただろうなと思う。
少したってお母さんがそこに入ってきて、風呂場の中で一緒に過ごした記憶がある。
アパートだから響く鳴き声を静かにさせたかったのか、まじこがかわいそうで付き合ってくれたのか
どのくらいの時間、二人で風呂場にいたかはわからないいけど。
そこだけ衝撃的の覚えているんや。
その後もあのおじさんが一緒に住んでいたのか、たまに来ていた人なのか、その時のまじこは分かっていなかった。
そして、母と帰ってきたのはなぜまじこだけだったのか。
何故、姉は一緒ではなかったのか……。
本当の事は何もわからない。



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