人生のバグに振り回されがちな人や、日常でクスッと笑って気分転換したい人へ。まじこの波乱万丈な実体験エピソードをお届け中!

第29話 窓からの逃亡ルート。お下がりセーラー服と貸本屋の10円。

お下がりのセーラー服と、新しくなった白いカバン

そのころは、お母さんが中学に上がるまじこの制服の直しをしていた。

中学校はセーラー服の制服だったけれど、まじこの家では新品を買い揃えることはできなかった。
だから、卒業生のお下がりを調達して、セーラー服の象徴である襟元の白線を新しいものに付け替えていたんや。

まじこは小さい時から新しい洋服を買ってもらったことがなかったから、お古や、お下がりに全く抵抗感がなかった。
そして小学校の卒業式には、その直してもらった制服を着て参列することになる。

母子家庭ということで、授業料や教科書、給食費は免除または減免されていた。
でも、カバンや制服をすべて新品で揃えることはできなかったから、制服はご近所の卒業生に譲ってもらっていたんや。
だから、まじこが中学生になるときに新しくなったものは、靴と鞄だけだった。

小学生の時に「クラリーノのランドセル」が嫌だった思い出があるけれど、中学に入るときは革のカバンではなく、首からタスキ掛けにする白い布のカバンだった。
そうやって、小学校を卒業して中学へ進学する準備が、少しずつ進められていた。

お母さんは、さすがにおじいちゃんの家であっても居候(いそうろう)というわけにはいかず、そのころから近くの診療所の薬局で働き始めていた。
昔はどんな小さな診療所でも院内に薬局があり、薬剤師でなくても働けていた時代だ。

誰もいない校庭と、愛犬ボン太

まじこは、小学校を卒業するのが特別うれしかったわけでもなく、中学に行けることが楽しみだったわけでもなかった。

ただ、「もう、あの嫌な思いはしなくて良くなるのかな」とか、あの子とは同じ学校じゃなくなるから、ちょっと安心、という気分の方が先だったんや。

そういえば、今どんなに小学校卒業のころから中学に入るまでの期間のことを思い出そうとしても、不思議と大した記憶がない。

当時、お爺ちゃんが飼っていた「ボン太」という犬がいた。

玄関先の藤棚の下にボン太の小屋があり、まじこはそこに自転車を止めていたから、すごく仲良しだった。
お爺ちゃんが忙しくて散歩に行けないときは、休み中のまじこがボン太の散歩を頼まれることがあった。

行く場所は、通っていた小学校の校庭。

ボン太は毛むくじゃらの中型犬で、愛想のいい犬やった。
散歩に出発するときはものすごい力で引っ張られるけれど、誰もいない校庭に着くと、綱を放しても
一人で何周も走り回って、ちゃんとまじこの元へと戻ってきた。

まじこより、よっぽど偉い。

校庭で過ごすまじことボン太の自由 山口百恵と貸本屋

ボン太が校庭を自由に 走り回っている間、まじこは当時流行っていた歌を大声で歌っていた。
ちょうど「新御三家」とか言われるちょっと前の、山口百恵や桜田淳子、キャンディーズの歌だ。
誰もいない静かな校庭で鉄棒に寄りかかりながら、ちょっとだけ歌手にでもなったような気分やった。

当時、近所の貸本屋は一冊10円とかだった。
おじちゃんからお使いを頼まれて貸本屋に行ったとき、「おつりはいいよ」と言われた小銭を、まじこはこっそり隠し持っていた。

そして、家で勉強をしているふりをして、お母さんのいない隙を見計らっては、部屋の窓からこっそり抜け出して貸本屋へ行き、自由な時間を過ごしていた。

大した休みの過ごし方ではないかもしれない。
だけど、あの張り詰めた「劇場」の家から離れて、ママゴンがいない時間、嫌な学校のことも考えずにいられる時間 勝手に歌手になった気分になる。窓から抜け出す時間。
まじこにとって何よりも「自由」を感じていた気がするんや。


コメント

タイトルとURLをコピーしました