人生のバグに振り回されがちな人や、日常でクスッと笑って気分転換したい人へ。まじこの波乱万丈な実体験エピソードをお届け中!

第24話 お爺ちゃんの選挙と、知らない街の学校。「ずっとはいない」まじこの夏

小学 5 年生になったある日のこと。
まじこはお母さんと二人で、お爺ちゃんのところへ行くことになったんよ。

お爺ちゃんはもともと、その市の市議会議員を長く務めていて、多分立候補するのはこれで
最後になるだろうという選挙があったからだ。

そのときも、なんで行くのか、何日くらい滞在するのかなんて詳しい情報は、まじこには何
一つ知らされていなかった。
いつもお母さんが勝手に決めていた。

学校への手続きも転校ではなく、「一時的に」という前提のもと、通っていた学校を欠席し
てほかの学校に通うというものだったと思う。

賑やかな選挙事務所と、お爺ちゃんのお手伝い

初めのうちは学校には行かず、家で過ごしていた。

選挙の為に、たくさんの人が出入りしている。
玄関にはいつも靴がいっぱい並べてあった。
まじこは玄関掃除の当番だったから大変やった。

お母さんが建築現場の人たちのお世話をしていた時に、おばちゃんがわざわざ手伝いに来て
くれた時のように、今度はお母さんがお手伝いをするんや。

ご飯の支度をしたり、お茶を出したり、おばちゃんはうぐいす嬢も務めていた。

家の隣には空き地があって、そこに選挙の掲示板作りの板がズラッーと並べてあった。
大人たちはその並べた板に糊(のり)を塗っていた。

糊はご飯粒と水を火にかけて糊状(のりじょう)にしたもの。
障子の張替えをするときの糊よりももうちょっとドロッとしていた。
それを板の上に刷毛(はけ)で伸ばし、その上にポスターを貼っていく。

大人はポスターがしわにならないように手早くさっさと仕上げていく。
まじこが黙ってみていると、お手伝いに来てくれていたおじさんが「やるかい?」と声をか
けてくれたので、板に糊を塗る作業だけ手伝わせてもらった。

本当に毎日毎日何十人もの人が出入りしていた。

その時は丁度夏休みの時期だったと思う……。
もともとまじこが行っていた学校の夏休みは 25 日間くらいしかない。
まじこの学校の夏休みが終わっても、内地の子供たちはまだまだ夏休みが続く。

「ずっとはいない」を象徴する、聴講生という名前

しばらくして、まじこはこの地域の学校に一時的に通うことになったんよ。
しかも急に。
まじこは別にこのまま「ずっとお休み」でよかったのに。

当時、まじこは「聴講生(ちょうこうせい)」と呼ばれていた気がする。
それが正式な名前ではないのは分かっていたけれど、その聴講生という名前が、
「ずっとはいない」を象徴しているように思えてならなかった。

言葉の壁と、初めての登校日

新しい学校へ行く。
みんながじろじろ見る。
教壇の横で挨拶をして席につく。
視線を感じる。
なんや品定めをされてる気分や。

新しい学校の教科書を持っていなかったので、お隣の子の教科書を一緒に見せてもらう。

まじこはなかなか馴染めなかった。

まず話す言葉が違っていた。
この地方の独特な訛りや方言があって、なかなかついていけない。
先生も訛っているし。何か聞かれても何を言われているのかわからなくて「え?」と聞き返
すと、女子たちのコソコソ話が聞こえるんや。

初めての登校日に、男の子からスカートをめくられた。
まじこが行っていた学校では、そんなことをする男の子もいなかったのに。
だからまじこはいつもと同じようにスカートの下には普通に下着だけやった。

ここの学校では、みんなスカートの下にショートパンツのようなものを履いていた。
まじこも翌日からは運動着のショートパンツを下に履いて通学した。

馴染めないクラスの空気と、女の子たちのグループ

まじこが入ったクラスには目立つ女の子 6〜7 人のグループがいて、まじこのイメージでは、
そのクラスの女の子たちの印象が「そのグループ」と「他の子」という感覚。

運動が盛んにおこなわれていた学校で、ミニバスケが特に盛んで、そのグループの中の背が
高い子 4 人はその選手やった。

その年くらいの時は男の子より女の子の方が体格はよくて、背の高い女の子もたくさんお
った。
男の子もその子たちにはちょっと逆らえない、そんな雰囲気さえあった。

まじこは男の子によくちょっかいを出されていたが、それを誰かが助けてくれることもな
く、むしろそれを妬(ねた)まれていた。
そんな空気のなかで、なかなかクラスの面々と仲良くなることはできんかったな。

まじこのセンサーがいつも反応しとった。

まじこが行っていた学校は、割と授業中もみんな挙手をして先生の質問に答えたりするのが
当たり前だったんよ。
でも、この学校ではわかっていても手を上げない。
上げても手は伸ばしてあげない、なんだかこそっとあげる。
かっこつけとるのか?と最初は思った。

手を上げて答える習慣がないのか、あるけれど高学年になるとそっちの方が良いと思ってい
たのか、本当に手を挙げる人がいなかったんよ。
むしろ手を挙げると「なに?」って表情で見られる。

「掟」を知らないまじこの一言

ある理科の時間に、先生が質問をした 「はい!みんな暑い時はどうしますか?」そんなだっ
たと思うんやけど、誰も手を上げない。
手を上げないどころか発言もない。
シーン。

教室の「掟」を知らないまじこは、「はい!」と真っ直ぐに手を上げて、 「手で仰いだり下敷
きであおぎます
」なんて答えちゃったもんだから、そこからまた彼女たちとの隔たりが厚く
なってしまった。

クラスの女の子達は、目立つグループの子たちは活発やけど、他の女の子は本当に静かな子
ばかりで、大体 2 人位ずつの仲良しか、または一人というケースが多かった。
だからなおさらこのグループは異常に目立っとった。

面白い理科の先生と、放課後の理科室

理科の先生はとても面白い先生で、授業も楽しかったし、生徒にフランクに話しかけたり冗
談を言ったりする先生やった。
だから大概の生徒はみんな大好きやった。

その先生はまじこが「虫とか蛇」とかを、他の女の子と比べて怖がらないから、まじこによ
く声をかけてくれた。
それがまた「仇(あだ)」になって、気にいられようとしているなんて言われ方をされとっ
た。

先生がどこからか蛇を捕まえてきた時に、まじこに「理科室にいるから後で見においで」と
声をかけてくれたことがきっかけやった。

まじこが育った寒い地方では蛇なんかそんなにいないし珍しかったしな。
まじこは見てみたかった。
「おいで」と言われたから行ってみる。
ただそれだけやったのに・・・・

まじこは放課後理科室に行って蛇を眺めていた。
先生はまじこを面白い子だと言ってくれた。
なんだか初めて、直接先生に褒められた気がした。
作文や蟻の実験は、お母さんに先生が褒めただけで、まじこが直接褒められたわけではない
から。

放課後の体育館で起きたこと

あるとき放課後に男の子から呼び出された。

バスケットのボールがどうしたとかこうしたとか言われ、体育館に行ってみた。
体育館の扉を開けるや否やすぐに、後ろから背中をドンッ!と押され、まじこはよろけた。
よろけた先には跳び箱があって、とっさにそれに背を向け振り向いた。

そこには男の子が 3〜4 人いた。
一人の男の子が、まじこが振り向いた時に、むぎゅっとまじこの胸をつかんだ。
そしてみんなでサッーと逃げて行った。
きゃっきゃと笑いながら逃げて行った。

まじこは何とも言えない感情を抱いた。
怖いでもない、悲しいでもない。
表すのなら「へっ?」。
表情で言うなら目が点という感情。
そして「なんで?」。

それからというもの、まじこはいろいろなところに警戒線をひいていた。
まじこのセンサーは鳴りっぱなしやった。
男の子たちにも女の子たちにも。
だからそこに滞在した期間は仲の良いお友達ができるわけではなく、いつも一人だった。

家に帰れば選挙のお手伝いの大人たちがたくさんいる。

まじこは居場所がなくなっていた。


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